2024-10-03
技術職で陥る罠、天狗になったら人は離れていく
仕事には大きく3つに分類される。
・営業職
・技術職
・事務職
本コラムの対象である技術職を定義すると、
「企業に属し、自身が持つ技術やスキルを使って、会社の営利活動に対し、間接的に価値提供を行う仕事」とします。
間接的価値提供とは、企業からみた顧客となる担当者と直接対話やコミュニケーションを図ることがなく、あくまで社内などの身内の人物に対し成果物を提示し、自らの価値提供を行う仕事をいう。
このようなポジションで仕事をする人は、自らの成果を身内の担当者に向けて提示するため、成果物の品質、価値の大きさが、会社から見た個人評価の基準パラメータとなる。
そのため、当人にとって、如何にして、高品位で価値のある成果物を作り上げるかが重要であり、周りよりも、高いアウトプット品質を目指すことになる。
一般に言う、技術力の高い人は、アウトプットされる成果物が、ほかの人にはできない高い品質が提示されることなる。
と、ここまでが前置きである。
さて、本題。
高い技術力を持つ人物になるほど、周りから高い評価と期待値が膨らむわけだが、ここに人間力として罠が存在する。
「天狗になる」
である。
自分が所属する部門、コミュニティ環境で、一番自分が技術力もあって、他人からの期待値が高くなればなるほど、天狗になるリスクが高まる。
なぜ、高まるのか。
それは、アウトプットする先が身内の人物だからである。
周りから期待され、喜ばれる機会が増えていく。
他の人にはできない依頼であれば、「あなたにしかできない」との期待が寄せられ、それ相応のフィードバックを受ける回数が増えていく。
これが繰り返されていくと、依頼する側が、頭を下げて「なんとかお願いします」と、依頼主がへりくだるようになっていく。
すると、どうなるか。
「そこまで言われたら、やってやるよ」
となる。
「やってやる」
この気持ちが生まれたら、すでに天狗になっている状態である。
仕事というのは、他人に価値提供を行い、見返りに給料をいただく構図である。
依頼主に対し「やらさせていただく」の気持ちがなければならない。
依頼主「やっていただけますか」
技術者「やらさせていただきます」
この関係が崩れやすいのが、直接顧客と接点を持つことのなく、社内の人としか会話をしない技術職である。
特に、自分が所属するコミュニティにおいて、自分が一番技術力が高く、他の誰よりも技術力があると自己評価している人ほど陥りやすい。
しかも、要求された内容が、自分の技術力で対応できない依頼の場合、正しい回答は
「ちょっと自分にはわからないから、対応がむずかしい」
と回答すれば良いものを、
「それはできない、無理、無理」
などと、依頼側に問題があるから「できない」と、自分ができないレベルの要求をする側が悪いとするニュアンスで回答するようになる。
俺はこの中で技術力は一番すごいんだと自己評価が高い人ほど、「わかりません」とは絶対に言わないのが大きな特徴である。
俺が「わからない」のだから「できるはずがない、依頼内容が悪いだ」とまでなると、相当な重症といえる。
これは「できるけど、面倒くさいので、やりたくない」とは別の次元の話である。
話を戻そう。
仕事とは、依頼に対して価値提供をし、依頼主の課題解決を図るのが仕事であり、報酬をもらう権利を得ている。
どんなに技術力が高かろうが、どんなに優れた品質を作り出せようが、依頼主では対応できないからこそ、技術職として存在価値があり、対価を得ている。
だれでも簡単にできない依頼内容に対し対応できるからこそ、高い報酬を得ているのなら、常に謙虚でなければならない。
依頼主「やっていただけますか」
技術者「やらさせていただきます」
自分の技術力にプライドがある人ほど、この意識を忘れずに、謙虚でいなければならない。