2026-06-03
サウジアラビアへ行くはずが上海で足止め。欠航で知った中国乗り継ぎのリアル
2025年の秋、私はサウジアラビアへの旅行を計画した。
目的地は首都リヤドである。
なぜサウジアラビアなのか。
その理由は、私が以前から持っている、少し変わった個人的な野望にあったからだ。
それは、世界各地の地下鉄や都市鉄道に乗ってみたい、というものである。
世界の都市を訪れ、その街の地下鉄や都市鉄道に実際に乗る。
人から見れば、かなりしょうもない趣味かもしれない。
しかし、自分にとっては、都市の空気や人の流れを感じることができる、大きな楽しみの一つなのだ。
その中で、以前から気になっていた国がサウジアラビアだった。
サウジアラビアという国は、かつては観光で気軽に入国できる国ではなかったのだ。
外国人を積極的に受け入れる国というより、どちらかといえば閉ざされた国という印象が強かった。
ところが近年、国の方針が大きく変わり、観光客の受け入れも進むようになったのだ。
さらに、首都リヤドではメトロの整備も進み、これまで車移動が中心だった都市に、新しい都市交通が生まれようとしていた。
2026年、サウジアラビアにメトロができたのだ。
そう聞けば、世界の都市鉄道に乗りたい私としては、ぜひ一度行ってみたいと思ったのである。
そこで私は、東京・羽田から中国・上海を経由し、上海からサウジアラビアのリヤドへ向かうルートで航空券を手配した。
日本からサウジアラビアへは、直行便が限られているため、どこかの国を経由して行く必要がある。
一般的には、ドバイ経由でエミレーツ航空を使うルートなどが候補になる。
当時のチケット代金の関係で、中国東方航空を使い、羽田から上海、上海からリヤドへ向かうルートを選択した。
航空券は、羽田からリヤドまでの通しのチケットになる。
つまり、途中で上海に立ち寄るものの、あくまでも目的地はリヤド。預け荷物も最終目的地まで運ばれる、いわゆるスルーバゲージの扱いである。
計画としては、羽田から上海へ飛び、上海で一泊し、翌日に上海からリヤドへ向かう予定だった。
ところが、出発直前に中東情勢が急変したのだ。
イランをめぐる軍事的な緊張が高まり、サウジアラビア周辺にも影響が及ぶ可能性が出てきたのである。
もちろん、私も状況は気にはしていた。
日本出発直前までの段階でも、上海とリヤドを結ぶ便は運航していた。
イラン情勢悪化したとはいえ、サウジアラビアが直接の戦場になっているわけではないだろう、という判断もあったからだ。
そのため私は、予定通り羽田から上海へ向けて出発し、上海まで予定通り到着した。
その夜は予定通り上海で一泊し、翌日リヤド行きの便に乗る。そう思ってい。
ところが、上海にいる間に状況が変わった。
イランからサウジアラビア方面へミサイル攻撃があったという情報が入り、その影響で、私が乗る予定だった上海発リヤド行きの便が急遽欠航になったのである。
スマートフォンに欠航の通知が届いたとき、正直、かなり焦ったのは言うまでもない。
すでに日本を出発し、上海まで来てしまっている。ここから先のリヤド行きが飛ばない。つまり、サウジアラビアには行けない。
しかも私は、単純に上海旅行をしていたわけではない、
羽田からリヤドまでの通しチケットを持ち、上海はあくまで乗り継ぎ地として滞在していただけなのだ。
そのため、予定していたリヤド行きが欠航になったからといって、自動的に日本へ帰れるシステムとはなっていないのだ。
ここからが大変だった。
まず、空港へ行かなければ話が始まらない。
私はホテルから上海浦東空港へ向かった。空港のカウンターで、リヤド行きが欠航になったことを伝え、代わりに羽田へ戻る便を手配してもらうつもりだった。
ところが、ここで大きな壁にぶつかった。
第一に、言葉の壁である。
私は中国語がまったく話せない。
英語も得意ではないが、それでも海外では、最低限の英単語と翻訳アプリがあれば、なんとかなる場面が多い。
数ヶ月前、インドに行ったときも、現地の人たちが翻訳アプリを積極的に使ってくれた経験がある。
私が自分のスマートフォンに日本語で話し、それを相手の言語に変換する。相手も私のスマートフォンに向かって話し、それが日本語に変換される。
このやり取りで、意外なほどインド人とはスムーズにコミュニケーションが取れた経験があった。
ところが、中国では事情が違った。
まず、中国ではGoogle系のサービスが基本的に使えない。
Google翻訳も当然そのままでは使えない。
LINEや多くのSNS、Yahooなどもつながりにくく、普段日本で当たり前に使っているインターネット環境とはまったく違うのはご存知だろう。
いわゆるグレート・ファイアウォールの存在により、ネット環境そのものが大きく制限されているのだ。
これまで海外では翻訳アプリを使えば何とかなるだろうと思っていた私にとって、これは非常に厳しい状況だった。
さらに困ったのは、中国の空港スタッフが、私のスマートフォンに向かって話してくれなかったことのである。
インドでは、こちらのスマートフォンを見せると、相手も自然に自分のスマホに話しかけてくれたのだが、上海の空港では、多くのスタッフが自分のスマートフォンを使い、中国語を日本語に翻訳して見せる対応まではしてくれた。
一見すると、それでも問題ないように思えるかもしれない。
しかし、実際には大きな問題があった。
中国の翻訳アプリで中国語から日本語に変換された文章は非常に分かりにくかったのである。
スマホ画面に表示されている日本語が、全く内容が理解できないのだ。
現地スタッフが一体何を言っているのかさっぱり分からない。大事な場面なのに、こちらが正確に彼らの言う内容が理解できないのだ。。
欠航、振替、キャンセル待ち、満席、荷物、チェックイン、締切時間。
こうした重要な話をしなければならない場面で、翻訳文が分かりにくいというのは、想像以上に不安に苛まれた。
私は航空券をTrip.comで予約していたため、Trip.comにも連絡した。ありがたいことに、中国語が話せる担当者が航空会社のカウンターと直接やり取りしてくれた。
しかし、問題はそこからだった。
羽田行きの便が、とにかく満席、満席、満席となっていた。
その日の便は満席。翌日も満席。翌々日も満席。羽田便だけでなく、日本方面の便そのものが非常に取りづらい状況だったのだ。
日中関係の影響もあり、日本と中国を結ぶ便数は以前より減便されていたのも影響し、中国へ行く日本人は減っている一方で、利用できる便数も限られているため、上海から日本へ戻る代替便はすぐ取れなかったのである。
結局、私が取ることになった選択肢は、キャンセル待ち一択だった。
しかし、このキャンセル待ちもまた、分かりにくいものだった。
日本の空港であれば、キャンセル待ちをしている人に対して、航空会社のスタッフがある程度案内してくれるイメージがある。
名前を呼ばれたり、状況を説明されたり、どこで待てばよいのか教えてもらえたりする。
ところが、上海浦東空港では、こちらから動かなければ何も進みませんかったのだ。
私は最初、チェックインカウンターの近くで待っていれば、何か案内があるのだろうと思っていました。しかし、そうではなかった。
ある便について、キャンセル待ちが出ていないか確認したところ、結果的には空きが出ていたようだが、確認したタイミングが遅く、すでにチェックインが締め切られて、キャンセル待ちが出ていたのに、乗ることはできなかったのだ。
目の前に可能性があったのに、手続きのタイミングが分からず逃してしまい、悔しい思いをした。
そこで次の便では、少し早すぎるくらいのタイミングで、再度カウンターに確認し。
すると、スタッフから無言に近い形で荷物を預けるよう促されましたのだ。
「やったぁ、はぁ、やっと日本に帰れる・・・・」
このときも、細かい説明があったわけではない。
スタッフの態度から、どうやら乗れるらしい?
そう理解して、急いで手続きを進めました。
結果として、私は何とか上海から日本へ帰ることができたのだ。
今回の経験で強く感じたのは、中国でのトラブル対応の難しさである。
私は中国という国が嫌いではない。
むしろ、上海という都市には興味があるし、中国の発展や都市の規模感には驚かされる部分も多くあった。
しかし、実際に現地でトラブルに巻き込まれると、他の国とは違う難しさがあると痛感したのが今回の経験だった。
特に大きかったのは、インターネット環境と言葉の問題だろう。
Google翻訳が使えない。
LINEも使えない。
普段使っている検索サービスやSNSも使いにくい。
さらに、空港スタッフの英語力も乏しかった。
私だって英語が得意ではない。だからこそ偉そうなことは言えない。
ただ、国際空港のスタッフであれば、最低限の英語や数字のやり取りはできるだろうと思っていた。しかし、実際には「満席」「羽田」「何便目」といった基本的なやり取りでさえ、うまく伝わらない場面が続いたのだ。
翻訳アプリがあれば何とかなる。
そう思っていた自分にとって、中国での現実はかなり厳しいものだった。
インドでは、翻訳アプリを介して現地の人とかなり自然に会話ができた。
相手もこちらのスマートフォンに話しかけてくれましたし、Google翻訳の精度も高く、何を言われているのか理解しやすかったからだ。
しかし中国では、こちらのスマートフォンを使ってもらうことが難しく、相手のスマートフォン上で表示される日本語訳も分かりにくい。
結果として、同じ翻訳アプリを使ったコミュニケーションでも、体感はまったく違ったのが印象に残っている。
今回、私はサウジアラビアへ行くことができなかった。
リヤドのメトロに乗るという目的も果たせなかった。
そんな中で、上海で足止めになり、欠航対応に追われた経験は、ある意味では非常に貴重な海外体験となったのである。
海外旅行では、予定通りに進むことことはむしろ少ない。
特に、戦争や国際情勢の影響で航空便が突然欠航になるような事態は、自分の努力ではどうにもできない。
急遽欠航担った場合は、まずは空港へ行く。
航空会社のカウンターで直接確認する。
予約サイトにも連絡する。
そして、キャンセル待ちの場合は、待っているだけではなく、自分から何度も確認する。
今回の上海での経験から、私はそのことを学んだのだ。
サウジアラビア旅行は今回は失敗に終わった。
しかし、上海で味わった言葉の壁、ネット環境の違い、海外で予定が崩れたときの不安、そして何とか帰国便を確保するまでの緊張感は、忘れられない経験になったのは人生における財産である。
リヤドへは、今年秋にリベンジする。
そして、今度こそ、サウジアラビアのメトロに乗り、この旅の続きを回収したいと思っている。